数年前、惑子は洋画のDVDレンタルにはまっていた時期がありました。週に5本とか借りてたんですが、なにぶん働いていると時間が取れません。
そこで、惑子は風呂で見られるDVDプレイヤーを購入したのです。
これがまた、いいんです。買った当初は寒い時期だったので1時間以上湯船に浸かってるとかなり温まるし。
洗面器にアロマオイルを垂らしたり、たいたり、サスペンス見るときは電気を消してアロマキャンドル点けたり。
おわあ、女子っぽい。
……その辺りでやめておけば良かったんですけどね。
で、ライブDVDを購入した惑子は当然、これも風呂で見たらいいんではないかと思ったわけです。
そして、ライブに酒は付き物だろ、と風呂に缶ビールを持ち込みました。
これがすべての始まりです。
そっからはもう、酒なしで風呂に入ることはありませんでした。
当時はまっていたウィルキンソンのジンジャーエールで作ったモスコミュールとか。飲み干しちゃうと、タオル巻いて台所に作りに行ってました。めんどくさくなってワインラッパ呑みもしました。
忘れられないエピソードがあります。
あまり褒められたことではないと自覚していた惑子はなるべく家人に知られないように、風呂で呑んだものはきれいに片づけていたんですけど、あまりに酔っぱらった日、一つだけビールの空き缶を脱衣所にを置き忘れてしまったのです。翌朝、それを見た父親が惑子に言いました。おまえは風呂で呑んでるのか、と。少し悲しげな声色が忘れられません。ごめんな、こんな娘で。
もうひとつは、忘れられない二日酔い。
とあるライブ後、いい気分で帰ってきた惑子はさらに余韻を楽しむためにそのバンドのライブDVDを入れました。ライブ中にガンガン呑んですでに酩酊状態であったのに、今日のライブ最高だったよなーなんつって湯船でビールとかワインとか空けてたら、翌日もの凄い二日酔いになったのを今でも忘れません。
それでも、そっからはしばらく、酒なしで風呂に入ることなぞなく。
ライブ見ながら。
洋画見ながら。
転じて本を読みながらずっと風呂で酒を呑んでおりました。
忙しかったり、窘められたりしてここ数ヶ月はやってなかったけどまた最近復活の兆し~。
だって時間短縮になるんだもの。
どうしようもねえな、アル中で。
よい子はマネしないで!ベロベロになるよ!
ホントまわるの早いから少ない酒で酔えて経済的!とか言わないよ!
風呂で毎日ビールを呑んでいた惑子に、近しい人(まあ、仲の良いイトコだ)は言いました。
『あんたはいつか風呂で死ぬ。溺れるか、すべって頭を打つか。そんときゃあんたの葬式で献花の代わりに献ビールをしてやる。棺桶の中を缶ビールで埋め尽くしてやる。死ぬほどビールが好きでした(not比喩)という言葉を添えてな』